幸せになってね

岸くんは不思議な人だ。

岸くんを概念で表すことはこの世の中にあるどんなに複雑な方程式を解くよりも難しい。

ふわふわと柔らかいその笑顔の裏には決して他人には見せない本当の感情が分厚く重厚な壁に護られているように思える。仮に他人に自分を見せたとしてもそれまでで、それ以上は踏み込ませないし、見せない。そしてまるで物語の佳境で連載が終了してしまった漫画のように後味悪くも綺麗なまま二度と知ることのない神秘な領域になりうる。岸くんとはそんな人だ。

 

そして私は、そんな岸くんのいわば我々に見せてくれる「一部分」に自分のありったけの”好き”を最大限に注ぐ。何も知らない彼の知らない部分を知らないままにして、知っているほんの少しだけに感情を揺さぶられる。どうしてこんなに”アイドル”という存在に夢中になってしまうのだろう、と考えた。私なりに考えて出した答えは、「アイドルには何だって求められるから」。私がいくら彼らに理想を求めたって、すべてを叶えてくれるなど初めから思ってはいない。だからこそ、結婚できないと分かっていながら結婚したいと言う。主演を張ってほしいと言う。デビューしてほしいと願う。叶えられないからこそ夢中になる。もしもの仮定に中毒になる。きっと願ったらすぐに叶えられてしまうものなど、すぐに飽きてしまう。手に入らないものほど欲しいのはおそらく人間の性だと思う。

 

私にとって、岸くんはその典型である。何を考えているかわからないから彼に夢中になり、突然思いもよらない発言や行動をするからその意図を考えては想像力が豊かになる。彼をもっと知りたいと思う。けれど、知りたくはない。矛盾ではあるが、彼のことを知らないまま好きでいたい。どうして今の発言をこのタイミングでしたんだろう、これらの行動を行った意図は何だろう。現実世界では他人が発言した言葉が自分に向けられていることが多い。相手の行動が自分に何かを示すための目的で行っていることが多い。しかしアイドルは違う。画面の向こうの発言は間違いなく自分に向けられたものではないし、とある動作が自分に何かを示すものでもない。つまりある意味第三者になれるのだ。一番楽で、一番面白いポジション。そのポジションで私はずっと彼を見ていたい。

 

そんな岸くんは今日、26歳になった。お誕生日おめでとう。

良い人だったら大事にしたくなります。大切にしているのはそれだけですかね。出会う人、良い人ばかりなんですよ。だから自然とそういう人たちが、自分を人に優しくさせてくれると言いますか(BARFOUT!2021年8月号より引用)

岸くんと言えばいつもニコニコしていて愛らしく、だれにでも優しい。自分でもそのことを自覚しているくらいには。しかし私はそんな彼の万物をも受け入れそうな体裁でありながらふとした時に憂いのある陰を見せるその眼が大好きだ。何を考えているか分からない、魅惑的な眼が。

一年前、私は今の景色を想像していなかった。むしろ、怖いとさえ感じてしまう。あんなに望んでいたことが、とんとん拍子で叶っていったから。L&の配信と舞台DREAM BOYSから始まり、VS魂のレギュラー、月9「ナイトドクター」へのメインキャストでの出演、女性誌の単独表紙、新しいグループのCMに単独CM、2年連続24時間テレビのメインパーソナリティー、3年連続紅白歌合戦出場、全国ツアー開催、SNS開設・・・。

努力は必ず誰かが見てくれていると知った。頑張ればいつかは認めてもらえるのだと知った。

けれど、同時に代償があると知ってしまった。

三者から岸くんの名前を聞くたびに心臓がドキリとする。自分の考えと異なったトゲのある言葉を目にするたびに心臓がチクリとする。彼のことを何も知らないくせに、憶測で話さないでほしいと思った。でも、そんなことを思う私もまた、彼のことを何も知らないのだ。痩せたな、と思っても、少ししんどそうな表情をしているな、と思っても、当然のように何も言わないしずっと笑顔だから余計に心配してしまう。むしろしんどいのならしんどいと言ってほしいと思ってしまう。けれど、疲れているだろう、しんどいのかもしれない、それも一種の、彼のことを何も知らない人間による憶測にすぎないのだ。何も知らない人間が何も教えてくれない人に振り回され、心を支配される。自分以上にその人の幸せを願ってしまう。それを望んでいる自分がいる。なんて単純なのだろうか。

でもそれは、きっと相手が岸くんだからだ。岸くんだから、幸せになってほしい、たくさんの人に愛されてほしい。そのままでいてなんて無責任なことは言えないけれど、でもやっぱりどこか岸くんは岸くんでいてほしいと願ってしまう。ただのわがままにすぎないけれど、そう思わずにはいられない。岸くんには、そんな魔性の力がある。言葉に表せない、不思議な人。そして、私の大好きな人。

 

1995年9月29日。26年前、2874gで元気に生まれ、埼玉の土に守られながら成長した岸くんへ。大好きだった野球をやめてわずか13歳で厳しくも華やかな世界へ足を踏み入れた岸くんは、今、幸せですか?苦しいこと、逃げ出したいこといっぱいあったと思います。それでも辞めずに青春全部かけて、大きな覚悟を背負って今なおここに立ち続けてくれてありがとう。岸くんの屈託ない笑顔にこれまでたくさん救われてきました。メンバーからはよく弄られているけれど、本当に岸くんが好きで仕方がないんだなと思うし、いざとなったときは誰よりも頼りにされている岸くんがとっても誇らしいです。最年長で、色々思うことはあるだろうけれど岸くんは誰がなんと言おうと立派なKing & Princeのリーダーです。実際は世間が思うよりポンコツなんかじゃないし、おバカでもない。本当に誰よりもかっこいいよ。ほら、そうやって私が言ってる間にも、きっと努力してるんだから一生敵いっこない。岸くんは頑張り屋さんだから今日もどこか私の知らない場所で頑張ってくれているんだろうけれど、どうか、無理はしないで、自分を一番大切にしてね。

 

 

大好きな岸くん、世界一幸せになってね。

 

2021.09.29

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